性感染症

クラミジア・トラコマティスによる性感染症です。外尿道口から白色ないし透明の分泌物が出て、排尿時の違和感を感じることもありますが、これらの症状に乏しい場合も見られます。潜伏期間は1〜3週間と比較的長めです。クラミジア感染により、陰嚢の腫れと痛みを伴う精巣上体炎を発症することもあります。女性の場合は無症状で経過することが多いですが、異常な色や臭いのおりものが出ることもあります。検査は尿や分泌物のPCRを行います。抗菌薬による治療が有効です。

黄色や緑色の膿性の分泌物が見られ、排尿時の灼熱感を覚えます。クラミジア性尿道炎より症状の強い場合が多く、潜伏期間は2〜7日と短めです。クラミジアと同様に、女性の方が症状は軽度です。検査は尿や分泌物のPCR、培養検査を行います。抗菌薬による治療が有効です。

クラミジアや淋菌以外の病原体の感染で引き起こされる尿道炎です。マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、ヘルペスウイルス、アデノウイルスなどの病原体が知られています。症状はクラミジア尿道炎に似ています。検査は尿や分泌物のPCRを行いますが、淋菌・クラミジアと異なり保険適用外です。マイコプラズマやウレアプラズマの場合は抗菌薬による治療が有効です。

トレポネーマ・パリダムという細菌の性感染症です。第一期では性器に無痛性の硬結が現れ、第二期では全身性の赤い発疹が出現します。症状の一時的な消退（潜伏期）を挟みながら進行していき、晩期には心血管系や神経系に深刻な障害をもたらします。採血検査で判定し、抗菌薬治療が有効です。全国的に流行している疾患であり、早期発見・早期治療が重要です。

単純ヘルペスウイルスによる性感染症です。陰部に痛みを伴う水疱や潰瘍が出現します。初感染の場合は発熱・頭痛・筋肉痛など全身症状を伴うことも多く、潜伏期間は2〜10日程度、水疱内溶液の抗原検査で判定します。抗ウイルス薬が症状の軽減に有効です。帯状疱疹と同じウイルスであり、症状消失後も神経節に潜伏し、ストレスや免疫力低下などを契機に再発することがあります。

ヒトパピローマウイルス（HPV）による性感染症です。無痛性の肉色のいぼが性器周辺に現れます。特徴的な所見のため、視診で診断が可能です。小さいものであれば軟膏治療や液体窒素による凍結療法、サイズの大きいものは外科的切除が優先されます。HPVには尖形コンジローマの原因となる低リスク型と、女性の子宮頸癌の原因と知られる高リスク型があります。HPVワクチンは女子では定期接種の対象となっています。高・低リスク型いずれも対応できる4価ワクチンが男性にも投与は承認されていますが、男性は定期接種の対象ではないため接種者の全額負担となります。

カンジダという真菌（カビ）による性感染症です。性行為を介して感染することはありますが、免疫力が低下したときに発症する日和見（ひよりみ）感染症の側面もあり、性行為がなくとも発症することは十分にあり得ます。男性の場合は排尿痛、亀頭周囲のかゆみ・発赤や恥垢の増加などが見られます。女性は排尿痛や性交痛、異常なおりものの増加など膣炎の症状がより明瞭であり、女性の方に多く見られる感染症でもあります。皮膚の擦過検査を行い、抗真菌薬の軟膏・内服・膣錠を使用します。