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風邪引き家族
院長ブログ
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2024/12/18 泌尿器科医の視点
風邪引き家族

こう書くと是枝監督のアカデミー賞映画みたいだが、本当にうちの家族は風邪が絶えない。数多の風邪のウイルスが、園児の中で共有され煎じ詰められて凶悪化して(妄想)、間断なく家庭にもたらされるため、親も気が抜けない。ひとりが持ち込んだウイルスに、家族は順繰り感染していき、39度出して保育園行けないくせになぜかピンピンして暴れている子供と37.5度でもへろへろしている大人という構図になる。

 

大人が高熱ともなれば床から這い出すのもいっぱいいっぱいであるが、そうは言ったって簡単に休めない職種や職場もある。どう風邪にかからないか、風邪になっても軽く終わらせるか、これは社会人にとって非常に大きな問題なのだ。しかしあまりにもcommon disease(ありふれた病)なこの感冒、医学生も研修医もなかなか教えてもらえない。だから四十路前の医師でありながら、「風邪にならない方法」とか恥ずかしげもなくgoogle検索してしまう。

 

そこでよく出てくるのは漢方に詳しい医師が作ったサイトであるが、すぐに実践できそうな部分もあれば、こんな細やかに使い分けられないよなとか覚えきれないなとか思う部分もある(怒られそう)。僕の場合はどうしているか。なんだか風邪引きそうという嫌な予感がしたら、とりあえず葛根湯。これは1番DH大谷くらい大事で、実際ツムラでは製剤番号1番だ。東洋医学において風邪の正式名称は「風寒の邪(ふうかんのじゃ)」といい、これから寒い敵が攻めてくるという意味合いらしい。だとすればこの嫌な予感というのも正しい。攻め込まれるぞというサインなのだ。ここでロキソニンやカロナールなどの解熱薬には手をつけない。攻め込まれる予感とともに体が熱を上げたがっている状態と理解している。

 

葛根湯の目安は発汗し始めるまで。経験上、風邪で一番辛いのは、汗を一滴も出せずに体内に熱がこもり続けて悪寒がしている状態だ。これは寝ようにも寝つけず、体ががくがくして休まらない。葛根湯や麻黄湯に含まれるエフェドリンが発汗を促してくれる。このエフェドリンという成分、僕は服用するともれなく動悸や頻尿を自覚する。普段から体力のない人が服用すると、逆に消耗してしまうこともあるのも納得だ。

 

じんわり汗をかき始めたら、あとは身も蓋もないが、なるようにしかならないと思って過ごす。ウイルスによって、あるいはこちらのコンディションによって、症状やその軽重は全然違うわけだし、勝利のローテーションみたいものはない。ちゃんと暖かく加湿された環境で過ごして、消化に良く体を温めてくれる食べ物をとり、リンゴやみかんなどなぜか普段より美味しく感じる果物を食べ、横になるのが辛ければできる範囲で家事をしたりするのが大事だと思っている。痛い背中と節々を我慢しながら天井をにらんでいるより、いっそ身体を動かした方が楽なこともある。風邪をもたらすウイルスには特効薬はないのだから、基本的には養生して、懸命に戦ってくれている免疫を後押ししてあげるしかないのだ。強烈なのどの痛みや頑固な空咳などは、細菌性疾患(これは抗菌薬の出番)の場合もあるので受診には躊躇しない。

 

外来中、どうしたら辛い風邪を引かずにすみますかという質問を受けたことがある。自分の子どもを見ていると、なんとなく、普段から細かく風邪を引いていることではないかと思っている。免疫は奥が深い。結局は鼻垂れ小僧が一番強いという話だ。

 

 

泌尿器科の観点から余談だが、風邪のときに咄嗟に使う葛根湯や麻黄湯(エフェドリンという成分)、市販の風邪薬(抗ヒスタミン薬や抗コリン薬の配合)は、前立腺肥大症などで普段からおしっこが出にくい人が服用すると、尿閉になりやすくなる。前立腺肥大症の方、風邪薬と深酒には気をつけてください。