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もとより医師が出張する機会は少ないし、コロナ禍を経て学会がオンラインでも視聴できるようになったのをいいことに、遠出をしなくなった。新幹線や飛行機などの移動はめっきりしなくなったが、先日久しぶりに新幹線に乗る機会があった。
思い返せば医師として最初の研修先に選んだのが、三島の病院であった。大学まで実家暮らしであったから、ついに親元を離れられるという高揚感と、引越しに際して新幹線に乗っていくという特別感もあった。三島にはこだましか停車しない。大阪や京都に行くときにのぞみに乗るのとは違う、新幹線の乗り方としては少し通な感じもして好きだった。三島は富士の湧水が街に流れる、穏やかな場所だった。これと有名な観光名所があるわけではないのだが、何より富士山が大きく映える景色は、医師生活の端緒でもあって、時折思い出される。
今回はのぞみに乗ったのだが、しみじみ日本的に磨き上げられた乗り物だと感じる。大阪東京が2時間半とちょうどよい按配で、低空を滑るように走る。パソコン作業もはかどる。そして心地良い揺れが眠りを誘う(作業はかどらない)。アプリで直前まで予約変更が自在、車両も最近はN700系の細かなアップデートしか行われておらず、いよいよ完成された感がある。
座席予約を見ていると、上りも下りも2席の奥側、E席から埋まっていく。なぜか。富士山が見えるからだという。埋めているのはインバウンドの観光客かといえばそうではない。海外の観光客は家族連れで3席並びのABC席で予約していることが多く、途中で富士山に気づいて、立ち上がって写真を撮っていた。余程日本通でなければE席狙いで予約はとらないだろう。車窓から富士山を捉えられるのは短い時間ではあるが、日本の新幹線ユーザーにこそいまだに根強い人気があるのだ。
いまリニア新幹線の終着駅である品川と名古屋の大深度に工事が進められている。40分間地下を突き進んで、東京名古屋を移動することをどれ程の人が望んでいるのだろう。今年開業60周年の新幹線は、ただただ国内の需要に応えるためだけに独自に進化して、僕たちは思い思いの過ごし方をして、今も富士山を見ながら駅弁をほおばって旅をしている。かつてのJR東海は洒落たCMを作っていた。クリスマスエクスプレスと銘打った甘酸っぱいCMで、かの山下達郎のクリスマスイブを知ることになった。そんな新幹線旅の情緒は、リニアにはあるのだろうか。