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50年間続いたスーパー戦隊シリーズが、静かにその幕を閉じた。大袈裟ではなく、僕の幼少期においては、それは単なる娯楽番組ではなく、ストーリーも歌も登場人物の台詞もすべて血肉となったと思う。テレビをつければヒーローに会うことができるというのは素晴らしいことだった。あの頃は戦隊シリーズだけではなく、ウルトラマンがあり、仮面ライダーがあった。特に日曜の朝、「〇〇戦隊!〇〇レンジャー!」というタイトルコールとともに始まるオープニングは、まさに魔法だった。おそろしく長くて退屈な一日が待っている子供にとって、それは一気に非日常へと誘う招待状だった。
僕が熱中していたのは、記憶する限り、『高速戦隊ターボレンジャー』から『五星戦隊ダイレンジャー』までである。50年も続いてくれると、男子の成長過程における共通言語として、どこからどこまでを観ていたかで、世代を特定するちょうどよい指標になる。江戸の町民が自らの人生を語るときに、自分が生きた時代の将軍は3代家光から5代綱吉までだったなとか振り返るように(想像だけれど)。幼少時の誕生日プレゼントといえば、もちろん巨大な合体ロボだった。母は「とにかくかさばるし、値段も高いし、何より毎年また一から買い直さなければいけない」と愚痴を言っていたが、しょうがない、そういうビジネスなんだから。大人だって毎年熱心に大河ドラマを観ているじゃないか。家庭によっては、お母さんが子供以上にハマっていたところもあるだろう。イケメンも大事な要素だった。実際、戦隊シリーズがなければ、永井大や玉山鉄二、松坂桃李や横浜流星といった才能が世に出ることもなかったかもしれない。
悠久の時を感じる50秒ものイントロを引っ提げた『ジュウレンジャー』も、スーツアクターを使わない「伝説の名乗り」を披露した『ダイレンジャー』も印象的だったが、その中でも白眉の名作といえば、「戦うトレンディドラマ」と称された『鳥人戦隊ジェットマン』だ。男性3人と女性2人のスタンダードな5人組。リーダーで正義感の強い熱血漢レッド、すこし斜に構えた皮肉屋でサブリーダーのブラック、お調子もののムードメーカーである太ったイエロー、そこにおっとりしたお嬢様のホワイト、そして小柄で溌剌としたブルーという、女性二人を擁する珍しい構成(元来女性はピンクやイエローであることが多かった)。問題は、ブラックとイエローがホワイトに恋心を抱き、当のホワイトはそれを意に介さずレッドに想いを寄せるという、三角関係以上に複雑な内部事情である。しかしすったもんだしながら敵を倒し、最終回、レッドとホワイトの結婚式を見守った大団円の最後に、ブラックが暴漢に襲われ独り命を落としてしまう。今なら韓国でリメイクされてもおかしくない展開であった。と書いてしまうと、日曜の朝から小さい子供に何を見せているのかという感じだが、実際は親御さん人気も巻き込んで戦隊シリーズの中興の祖となった。幸い、ブルーだけはこの泥沼に加わらなかった。もし彼女まで参戦していたら、地球の平和どころか戦隊内部の治安すら崩壊していただろう。
さて戦隊シリーズを見返すと、まれに3人戦隊もあったが、ほとんどが5人戦隊であることに気づく。個性豊かな5人が集まると何かケミストリーが起きるというのは、歌舞伎の演目『白波五人男』から連綿と続く様式美らしいのだが、日本人にとって「5人」というのはひとつの事業をなすにあたり、最小単元ということになるのだろうか。5人集まるとおのずと役割というか、立ち位置というのが決まる。冷静沈着な司令塔がいて、現場を鼓舞する情熱家がいて、全体を俯瞰するリアリストがいて、空気を和ませるムードメーカーがいて、細やかな配慮を忘れないバランサーがいる。このクリニックも奇しくもほぼ同等の規模感なのだけど、地球の平和とまではいかないが、西川口周辺の排尿の平和くらいはなんとか守れるかもしれないと思っている。
かつて、自分に男の子が生まれたら、一緒にスーパー戦隊を見ようと夢見ていた。合体ロボをねだられたら、妻が反対したって絶対に一緒に買いに行くんだと決めていた。しかし残念ながら、息子には全くと言っていいほど刺さらなかった。特撮ヒーローを素通りして成長していく彼を見ては、どこで「勇気と友情と正義」を学ぶのだろうかと勝手に憂いていた。そんな折、公園で小学校低学年くらいの男の子たちが集まっているのを見かけた。中にはすでにツーブロックにして割と強面の男の子もいたのだけれど、彼らの手にはボンボンドロップシールが無数に貼られたシール帳があった。彼らは驚くほど平和に、シールを交換していた。ぷっくりしてつやつやしたクロミちゃんに、ちいかわとすみっコぐらし。男子の世界も今や、かわいいkawaiiこそが正義である。今の世界情勢のような腕力と無理筋で決まる世界ではなく、お気に入りのシールを緻密な交渉によって交換し合うという、高度な外交によって平和が成立している。戦隊シリーズのような勧善懲悪の世界など学ぶ必要ない、争いのない世界がそこにはあった。
代わりに、全国の文具店でシール入手を巡る親御さん同士の小競り合いが勃発しているらしいが、そんな大人の事情は子供たちの平和には関係ない。時代は移り、正義の形も変わっていく。それでも、地球と男の子たちの退屈を50年間救い続けてきてくれた歴代の戦士たちに、心からの感謝を捧げたいと思う。