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インフルエンザウイルスが猛威を振るっている。川口市の感染症週報を見ても、インフルエンザの感染者数が圧倒的に多く、COVID-19やその他の感染症はごくわずかだ。こうなると医療者側もインフルエンザをまず疑い、単独でインフルエンザ検査を行うことが増える。そのため、他の感染症の検出数がさらに減少するのも無理はない。今はインフルエンザA型が大流行しているが、やがてB型も出てくるだろう。今年のA型は胃腸症状が強く出る印象がある。B型はA型ほど感染力は高くなく、高熱も出にくいと言われているが、実際はどうだろうか。
インフルエンザも罹れば十分につらい。しかし、COVID-19のパンデミックを思い返せば、これほどの感染者が出ているにもかかわらず、日常生活が維持されている現状をありがたく感じる。ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染が起きたのは2020年2月、初の緊急事態宣言が出たのは同年4月。あれからもう5年が経つ。当時、東京医科歯科大学病院に勤務していた。病院はCOVID-19の重症患者を積極的に受け入れ、ICUは厳重な管理下に置かれたレッドゾーンとなっていた。重症例では換気効率の問題でうつぶせのままで挿管されていたし、人工呼吸器でも維持できない方にはECMO(エクモ:体外式人工肺)が導入されていた。レッドゾーンに立ち入るスタッフは、かの白色の防護服に全身を包まれていた。泌尿器科の術後管理でたびたびお世話になっていたICUには、いつの間にかドラマですら見たことのない異様な光景が広がっていた。
すぐに救急科や集中治療科だけでは手が足りなくなり、予定手術はすべて停止され、病院全体でCOVID-19患者の治療にあたる体制に切り替わった。泌尿器科でも誰がICUへ応援に行くか話し合いが行われた。救急科の医師やICUのスタッフが既に第一線で戦っている以上、同じ医療者として尻込みするのは筋違いだと理解していたが、それでも不安がなかったわけではない。意を決してICUへ入れば、救急科の医師や看護師たちが鬼気迫る様子で動き回る中、何をすればいいのか分からず立ち尽くしてしまう、あの感覚は研修医以来だった。一分の隙もない防護服とN-95マスクは暑く息苦しく、30分ほどで息が切れた。重ねた手袋と曇ったフェイスシールド越しの視界で中心静脈カテーテル(CV)を入れるのも一苦労だった。その横で、淡々とECMOを挿入する心臓外科医の姿には頭が下がる思いだった。
あれから数年、COVID-19は5類感染症へ変わった。自分は大学病院を離れ、クリニックで発熱患者の診療を担当するようにもなった。簡単な防護具で新型コロナウイルスの抗原検査を行い、「陽性ですね。学校は5日間休みましょう」と伝えられる日常がある。ここまでたどり着くまでに、どれだけの犠牲があったのか。何が正しいのか分からないまま、それぞれの立場の正義をぶつけ合った消耗はいかほど意味があったのか。吹きさらしの広い公園が閉鎖され、子どもたちの遊び場が奪われる一方、ショッピングモールはマスク姿の家族で賑わっていた。親として釈然としない気持ちにもなったが、でも立場が違えば見える景色も違う。公園で遊ぶ子どもたちに不安を感じた人もいたはずだ。
今、インフルエンザが猛威を振るっていても、かつてのように互いの意見をぶつけ合うことはない。感染したことを責める人もいない。発熱したら家で休み、つらければ病院に行く。また休む。そしてこの流行はやがて終息する。これについては衆目が一致するところであろうし、いずれ終息するとわかっていれば僕たちはこんなにも落ち着いていられる。
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当院では待ち時間なくインフルエンザの抗原検査を行うことができます。胸部レントゲン検査やその他の抗原検査も対応可能です。かぜ症状のある方はマスク着用のうえ気軽にご相談ください。
(参考)当院のインスタグラム