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Good Luck
院長ブログ
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2025/01/24 院長のひとり言
Good Luck

昔から木村拓哉のドラマが好きだった。どのドラマでもキムタクはキムタクだったが、それでも好きだった。作品に応じて自在に演じ分けるカメレオン俳優になることなんて、彼を見る側としては期待してはいまい。検事だろうが、パイロットだろうが、フレンチシェフだろうが、ピアニストだろうが、美容師だろうが、アイスホッケー選手だろうが、役柄を超えて木村拓哉という存在が主人公であるという安心感。キムタクが「ちょ待てよ」と言えば、これだよこれといった感じだ。

 

中でも『Good Luck!!』というドラマは何度見返したことかわからない。大好きな空の話だったからだ。自分は小さい頃からパイロットに憧れてきたし、医学部に進学後も、大学帰りに羽田空港の展望デッキに寄って、ぼんやり飛行機を眺めていた。なんで医学部にいるんだ俺はと思ったことも何度もある(親にがっちりレールを敷かれて、逆らわなかったからです)。白い巨塔を観ても、救命病棟24時を観ても、医龍を観ても、Dr.コトーを観ても、空港で覚えるあの高揚には勝てなかった。

 

今から30年以上前の話になるが、飛行機を降りる間際に突然CAさんに「将来パイロットになるんだ」と声をかけたとのことだ。びっくりする母親を尻目に、おそらくチーフパーサー(客室責任者)であったCAさんは「坊や、ちょっと待ってなさい」と言い、全ての客を降機させた後、おもむろに2階の操縦室に向かった。操縦席でまだ仕事をしている機長と副操縦士に向かって、「この子、パイロットになりたいんですって」と話しかけた。「おう、じゃこっちおいで」と機長が膝に乗せてあの帽子をかぶせて写真を撮らせてくれた。この瞬間のことは今でも鮮明に覚えている。これはセスナ機とかではなく、巨大なジャンボジェット(B747)での話だ。現代の安全管理下では到底考えられない話で、今なら国交省が飛んできそうだ。機長の懐の深さもさることながら、特にCAさんの機転には、社会人である今だからこそ深く感銘を受ける。本来の業務の範疇を超えて、目の前の相手に寄り添ってくれたのだから。

 

だから今も、「将来お医者さんになりたいんだ」という小さな子供が目の前に現れないかなとひそかに思っている。残念ながらあの機長とCAさんの期待に応えることはできなかったが(まさか町の泌尿器科医をしているとは)、彼らにしてもらったことをいつか誰かに返したいなと思っている。聴診器を貸してあげようか、白衣でも着せてあげようか、と考えたこともある。だが、僕の目の前に現れるのは、予防接種が怖くて泣いている子、風邪の高熱でぐったりしている子、腫れた陰茎の処置におののく男の子。残念ながら目を輝かせている子供にはまだ会えていない。まあ自分だって病院で心躍った記憶はないからなと思いつつも、ここは改めて木村拓哉に白衣を着てもらうしかないかもれない。そして彼らの予想し得ない将来にGood Luckと声をかけるのだ。