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和樂備(わらび)神社に行って、ご祈祷を受けてきた。電話で「クリニックの開業に際してご祈祷をお願いしたいのですが」と伝えたところ、「開業報告ですね」と返され、ん?と思いながらも「はいそうです」と答えたが、行って確認したら開業『奉告』であった。神様への奉告である。七五三シーズンではあるものの、平日朝早くなんて七五三たちは誰も来ない。ひとり静かな社殿に上がって、無事故無災害を祈ってきた。
特に信心深いわけではないのだが、昔から自らの執刀の前には祈り手を合わせてきた。大きな手術のときには、下大静脈からの突然の出血に見舞われたり、強固な癒着で遅々として前に進めなかったり、予期せぬことは本当に起こる。「30分後の自分はこの状況を打開して笑えているのだろうか」「無事閉創して病棟へ戻せているのだろうか」とふと頭をよぎる瞬間が何度かあった。
下大静脈の出血点をガーゼで押さえながら、冷静を取り戻しふと顔を上げると、ポンピング(急速輸血)を行う麻酔科医や不安そうな器械出しの看護師、どうしたもんかねと思案顔の前立ちの先輩医師がおり、そうよね執刀医の自分がどうにかするしかないよねと押さえたガーゼをそろりと剥がして、もう一度その出血に立ち向かう。そんな窮地には、自分のこの身体を通して、今まで培った経験と判断力、そして大げさではあるが数多の外科医が積み重ね伝承してきた叡智やらがすべて発揮されることを願うし、そこに人智を超えた何かへの祈りも自ずとせざるを得ない。
開業準備のためそんな世界から距離を置いて、早くも1年が経つ。手術には後ろ髪を引かれる思いもするのだが、得るは捨つるにあり。残念ながら手術も開業もなんて総取りすることはできない。外来診療ではかつてのような冷汗が出る瞬間はないけれど、ふとこの瞬間も、全責任を背負ってその一瞬を乗り越えようと奮闘する人たちがいることに思いを馳せる。ANAのすべての旅客機の操縦室には成田山新勝寺のお守りが祀ってあるという。苦境を乗り越えるには、正しく準備をして、いかんなく能力を発揮して、そして天佑を待つ。それしかないのだ。
ご祈祷から随分話が硬くなってしまったけれど、この小さなクリニックを開くにあたっても、やっぱり手を合わせることは忘れずにいようと思う。
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最後に。クリニックのインスタグラムを開設してみました。うまく更新できるか心配ですが、ぜひのぞいてみてください。