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泌尿器科を名乗る
院長ブログ
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2024/10/13 泌尿器科医の視点
泌尿器科を名乗る

幸い職業の欄には「医師」と書くだけですむわけだが、もし何科ですかと聞かれれば「泌尿器科です」ともちろん答える。そうすると、なんで泌尿器科を選んだんですかという質問を受ける。統計を取ったわけではないけれど、経験上、他科の先生よりその質問に遭遇する確率は高い。そして言外に、なんで(また)泌尿器科(なんて)選んだんですかというニュアンスを感じる。時には純粋な興味から、時にはちょっと戸惑った顔で質問される。何を言いつくろっても“しも”を扱う科ではある。「診断から治療まで一貫して引き受けられるからだ」とか、「ロボット支援手術が特に盛んな分野だから」とか、まあまあ納得してもらえる答えを泌尿器科医各位持っているはずだが、はて、なんで自分は選んだのか。

 

泌尿器科医というのはその職業名の中に「尿」と入っており、少なからず医師の志望数にも影響を与えているのではないかと思う。もちろんその泌尿器科という名称は、患者さん側の受診のハードルを上げている気がする。泌尿器科に受診するというのは、風邪で内科を受診するのとはまた趣が異なるというか、特に初めての場合ちょっとした覚悟が必要だろう。実際にご高齢の方でも、「恥ずかしくてなかなか受診できなかったのですが」と仰る患者さんに何度かお会いした。泌尿器科医の中にもその名称にコンプレックスを持っている人がいるのかわからないけれど、泌尿器外科とか腎泌尿器科とか名乗ったりする病院もある。でも僕は開き直って泌尿器科でよいのではないかと思っている。

 

英語だと泌尿器科学はUROLOGYであり、看護師さんにはよくウロの先生と言われる。本当の発音はウロではなくユーロに近い。日本の泌尿器科は皮膚科から派生したというのは有名な話だ。皮膚泌尿器科を標榜する昔ながらの町の診療所は今でもある。陰部の表面的な疾患でもある梅毒の治療が、喫緊の問題だった時代の名残りもあるのだろう。一方で米国では泌尿器科はれっきとした外科の一分野であり、一般外科の修練を終えた外科医しか専攻できない。副腎・腎臓・尿管・膀胱・前立腺などの後腹膜に位置する臓器を扱う外科医という位置付けだ。志望者が多く狭き門でもあるため、米国の学会で会った泌尿器科医は軒並みスーパーエリートという印象だった(なにせ彼の国の医師たちは壇上でも自信に満ちているので、泌尿器科医に限った話ではないのかもしれない)。

 

それで、なんで泌尿器科を選んだのかという話に戻る。外科医になりたいと漠然と思っていたところに、先輩医師から「泌尿器科っぽい顔してるよ」と言われたからだ。業界においてウロ顔と言われるやつだ。ただ調べてもついぞどんな顔の傾向を指すのかわからなかった。複数の泌尿器科医に会った経験のある方、何か共通する特徴に気づいたら、今度こっそり教えてください。今更傷つきはしませんから。