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天気晴朗なれども
院長ブログ
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2026/10/07 院長のひとり言
天気晴朗なれども

一転して、好天が続いている。先月は性懲りもなく毎日雨が降っていた。9月の東京は史上初、すべての日が降水日だったらしい。ふと尾鷲市の雨温図が浮かぶ。小学校の社会でやったやつだ。太平洋側の気候があり、日本海側の気候があり、瀬戸内の気候があり、北海道の気候があり、テストになると「この雨温図に適当な都市を選びなさい」というのが定番だった。そこに並ぶように、尾鷲だけは特別扱いされていた。年間を通して他の都市より突出した降水量。その理由は、黒潮と紀伊山地に挟まれて雨雲が量産されるからだ。特に尾鷲の9月の降水量は臨界突破している。この前大阪に行ったとき、初めてあべのハルカスに上ったのだが、展望階から遠くに紀伊山地が見えて、その向こうが「かの雨の世界か」と思った。でも9月の東京だって真剣な雨季だった。来年から雨温図の入試問題もちょっと変わるかもしれない。

 

さて、今回はメガネの話。中学生のときに板書がぼやけるようになって、かけるようになった。僕は結構物持ちがよい。冬物のコートは大学生の頃に購入したものも使っているし、時計は10年以上前に妻からもらったもの一つしかない。メガネだって、研修医のときに購入した年季の入ったものを塗装し直して使っていた。子どもができてからは、横になっているときに顔面をつぶされたりして、何度かフレームが負傷することもあった。それでも修理に出して後生大事に使っていたが、さすがに経年劣化には耐えられなくなってきた。なんでもないときに、ほどけるように分解するようになった。

 

しかしよく考えたら、メガネほど簡単に人の外見や印象を変える道具も、そう多くはない。毎日顔の真ん中に鎮座しているくせに、普段は視力を補う道具としてありがたみもなく雑に扱われている。でも黒縁にするか、縁なしにするか、丸くするか四角くするかで、ずいぶん顔つきが変わる。それでいて、髪型を変えるより簡単で、服よりも毎日同じものを身につける。そう考えると、もう少し真剣に向き合ってもよいのかもしれない。選ぶメガネによっては、坂本龍一の黒縁のように、スティーブ・ジョブズのリムレスのように、昭和天皇やジョン・レノンの丸メガネのように、その人のイメージを決定づける要(かなめ)になるかもしれない。

 

とはいえ、メガネというのは店頭でかけたときと、実際に暮らし始めてからとで印象が違う。鏡の前ではぴったりだと思ったのに、一日かけていると妙に気になったり、逆に「ちょっと違うかな」と思って買ったものが、いつの間にか一番しっくりきたりする。四六時中、顔の一部としてくっついているのだから、案外難しい買い物である。そう考えると、失敗してもまあいいか、くらいの値段で買える方がありがたい。僕にはもともと、多少値が張っても良いものを買って長く使うのがいいんじゃない、という考えがあった。でも最近は、それも少しずつ変わってきている。ユニクロの柳井正やOWNDAYSの田中修治の著作も読んだけれど、良質でシンプルなものを手頃な価格で提供するという考え方で、それぞれの企業を成長させてきた。アパレルにせよメガネにせよ、尖った企業の努力で僕たちの選択肢が豊かになっていく。もちろん、綾瀬はるかだからユニクロが映えるし、木村拓哉だからOWNDAYSの黒縁メガネが格好いい。当然ながら、僕が試着しても鏡の中に木村拓哉は現れないけれど、カジュアルに背伸びできるようになった。泌尿器科だって、もうちょっとカジュアルに受診できるようにならないかなと思っている。

 

メガネをかけていて困ることの一つが、雨である。大学生のころ、長い夏休みを使って一か月ほどシカゴ近郊の片田舎にホームステイしたことがある。そこで妙に印象に残ったのが、彼らが本当に傘をささないことだった。少なくとも日本人のように、天気予報を見て「午後から降りそうだから、朝から傘を持っていこう」という感じではない。多少濡れたっていいじゃないか、という具合に歩いている。無粋なビニール傘なんて似合わない。あの感じが、僕は結構好きである。だから自分も多少の雨なら傘をささずに歩くことにしている(コンビニ傘を買うことを禁止されているのもあるけれど)。でも9月の東京の雨は、一瞬で濡れ鼠になるほどで、それでは颯爽と歩くこともできなかった。金木犀が香る10月には期待したい。せっかくの新品のメガネなのだから、今度こそ気持ちよく歩きたいところだ。

 

ところで、僕と一緒に息子もメガネを買った。メガネだってまとめ買いがお得なのだ。でも息子がメガネをかけると、残念ながら僕と瓜二つになってしまうようである。もうちょっと妻の遺伝子が活躍してもいいじゃないかと思う。家族でうーんと唸って選んだ息子のメガネは、今のところ箱ごとランドセルの底に沈んでおり、全く使われている形跡はない。息子のメガネが日の目を見るのは、もう少し先になりそうである。その頃まで、度が合っていればいいのだけれど。