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うちのクリニックは駅徒歩2分が売りなのだが、どうにも場所がわかりにくいらしい。患者さんもスマホ片手に、ほど近いところまで来てくださるのだが、最後の通りで見つけられず、受付に電話かかってくることもしばしばあった。近隣のローソンやファミリーマートの店員さんに尋ねたら教えてくれた、という方もいらっしゃった。最近のコンビニは外国人スタッフも多いけれど、泌尿器科はどこにありますかと突然聞かれたら、さすがに戸惑ってしまうかもしれない。この場を借りて近隣の皆さまには感謝申し上げます。
このような状況を大変申し訳なく思っているのだが、現実としてほいっと看板を用意できるわけではない。Web広告なら課金すれば表示回数も増やせるが、リアルの看板はそうはいかない。ふと西川口駅東口のロータリーを見上げても、看板スペースはすべて埋め尽くされている。仮にその一角に広告を出せたとして、誰かの目に止まるだろうか。一応、当院の入る3階建ての建物の入口には、とても控えめな看板がひとつ立っているのだが、目の前の通りを闊歩する武南高校の高校生たちは、向かいの美味しそうな魚介豚骨系つけ麺屋と二郎系ラーメン屋は目に入っても、ここに膀胱炎を治してくれる泌尿器科があることなんてまず知らないだろう。
まあ看板なんてそんなものよとも思うが、しかし思い返せば、記憶に残る看板というものはちゃんとあるのだ。
昔、千駄ヶ谷や大塚や新大久保のあたりには「性病科」という大きなネオンサインを出している医院があった。夜になると香港の九龍がごとく光るものだから、新宿の塾に通う車窓からよく見えた。煌々と光るネオンサインとは対照的に、診療所の入口は正方形のモザイクタイルで作られた外壁で囲われて、直接見えないようになっていた。その雰囲気から、高校生ながらに、きっとデリケートな病気なんだよなと察しはついた。その20年後に同業になっているとまでは想像していなかったけれど。
他にも思い出されるのは、首都高を走ると飛び込んでくる「きぬた歯科」の看板。あのおじさん(失礼ですが)を連続的に何度か目に焼き付けないと、中央道には出られないようになっている。その他の企業広告など残念ながら記憶に残らない。人の顔と視線の威力というのはすさまじいものなのだ。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に出てくる、視線が追いかけてくるビッグ・ブラザーのポスターのように。
さらに、東海道新幹線の車窓からぼーっと外を眺めていると見えてくる、727という数字だけの看板。よく目をこらすと小さくcosmeticsとあるから化粧品関係なのだろうが、それにしても田畑の中に727という数字の並びだけが何度か現れると、妙に気になってくる。これもフックになる良い看板の例だ。
そんなこんなで自院の近くにはまだ看板は出せていないものの、先日、別の場所に大きな看板を出した。制作はイラストレーターを使用して自分で行った。大学の卒業アルバムを作成するときに身につけた技術(過去ブログ)が、こんなところで役に立つとは思わなかったが、広告の制作費が一部浮くのだからありがたい。自分の顔写真を自らの手で広告に組み込むというのは恥ずかしいことこの上ないが、自腹を切って広告を作るのだから、恥を忍んで作業する。それでも、ぎりぎりのところで羞恥心が頭をもたげて、看板の「きぬた歯科化」を阻止させる。ああ、ここで振り切れないあたりが凡才なのだ。
でも押しは強すぎない方がいいよね。だって泌尿器科だし。(と言い聞かせる)